結局、私は3ヶ月慣れ親しんだブライトンを後にする事に決めた。
今やイギリスの母、優しいダウンおばあちゃんと離れる事は非常につらい。
しかも、6ヶ月いる予定だったところを短縮した為、ダウンおばあちゃんは
自分のせいだと思い込み、傷つけてしまった。
ブライトンを後にする日。
イギリスでは珍しく晴天。
ロンドンまでは電車で1時間。バスで2時間。
今回はバスで行くことに。
あまりの大荷物に、ブライトンのメインバスターミナルまでは
タクシーで行くことにする。
日本なら呼べばすぐ来るタクシー。しかしここはイギリス・・・・。
待てども、待てども・・・。
「タクシーが来ないんだけど、どうしよう。」とつい甘える。
「自分でタクシー会社に電話して対応しなきゃダメよ」と私に促し、
おばあちゃんは、傍で優しく見守ってくれる。
こんな優しい心使いも今日で終わりなんだ・・・。
これからは一人でなんでもしなければいけないんだと、淋しさが
湧き上がって来る。
そうこうしている内に、出発時間ギリギリになってやっとタクシー到着。
もっと、ゆっくりとダウンおばあちゃんとお別れがしたかったが、
タクシーに飛び乗らなければならなくなっていた。
大急ぎで荷物をタクシーへ積み込み、おばあちゃんとぎゅ~っと抱き合う。
実際におばあちゃんは大きいのだけれど、それ以外の大きさと優しさを
感じるハグに涙が出そうになるのをこらえ、お別れの挨拶「ほっぺたキス」をした。
そして、また大急ぎでタクシーに乗りこむ。
タクシー運転手が急いでいることを察知して、すごい勢いで出発した。
その猛スピードの中、後ろを振り返るとおばあちゃんが淋しそうに
手を振っている。そして、屋根には黒猫キシーがいつの間にかいて
お見送りをしてくれているようだった。