これからここでロンドンの生活が始まるのか。気が重くなってきた。
しかし、とりあえずは寮を出て、ハイゲートという街を散策してみる。
寮を出ると、そこは急な下り坂。
街路樹がうっそうと生い茂る緑豊かな閑静な住宅街。
道の両サイドは2階建ての大きなレンガの一軒家が、ゆったりと
した敷地の中に建っていて、均等に並んでいる。
イギリス人は外から部屋が丸見えなのをあまり気にしないのか、
部屋の中が外から丸見えだ。
本がぎっしり詰まったアンティーク書棚のある
趣のある書斎が見える。机の上のランプもステキだ。
きっと、家主は博士に違いない!(勝手な妄想。。。)
おそらく、家の奥には芝生の大きな庭が控えているのだろう。
書斎を通り抜けて、白いテラスが見え、その奥には緑が広がっている。
ブライトンの労働者階級のエリアに住んでいた私にとって、
ここの環境は全く別世界だった。
お高くとまったお金持ちばかりが住んでいたらやだな・・・。
そんな事を考えながら、早、夕方の6時になっていた。
引越しを手伝ってくれたさくらちゃんは、そろそろブライトンに
帰らなくてはならなかった。
イギリスに来て以来、たくさんの時間を一緒に過ごして、
一緒に笑ったり、ホームシックになったりしていたさくらちゃん。
地下鉄のハイゲートの駅まで送りに行った。
何とも言えない不安な気持ちに襲われながら、エスカレーターを
降りていくさくらちゃんを見送った。
「あ~、また一から始まるんだ。。。」
一人の帰り道。取り合えず、明日の朝ご飯を買わなければ・・・。
小さなお店に入り、牛乳と、コーンフレークを手に、レジへ向かう。
黒人の店員さんがいた。
牛乳とコーンフレークを手渡した時、彼は大きな優しい笑顔で
私を見た。
その時の私にとって、天使のような笑顔だった!
何か、救われた気持ちで、あの蜂の死んでいる寮に戻ってきた。
「よし!気持ちを新たに明日から頑張るぞ!!」
「狭い部屋がなんだ!蜂がなんだ!紅茶が近づいたんだ!」
「そうだ!部屋の空気を入れ替えよう!」
上下に開け閉めする窓を、上に勢い良く上げた。
冷たい新鮮な風が部屋に入ってきて、部屋の中の空気が変った。
そこで終われば良かったのだが、窓が自然に閉まってきた・・・。
開けっぱなしにしておきたいのに・・・。くそ~!
なんとか、かんとかで、窓をナナメにして、必死で窓枠に引っ掛け、
開けたままにしようと努力するのだが、これがなかなか・・・。
イギリスの古い家はこれだから・・・。
せっかく上がったテンションが、すっかり下がるのでした・・・。