道場ヤブリ 「たのもう!!」

ひとまず家に帰り、一晩かけて、ブラマーさんに話す内容を考えた。
失敗するわけにはいかない。


よし!ミュージアムに行って、「働かしてください!」と、言うんだ!

イギリスにせっかく来たのに、紅茶の学校が無いからって帰れる訳がない!

「なおこガンバレ!!」 自分で自分を励ます。


いざ出陣!(心は武士・・・)


ロンドンブリッジ駅からミュージアムまでの15分の道のり。
ブラマーさんに伝えることを、ぶつぶつと独り言をいいながら、一人歩く。
「あ~、ミュージアムが近づいてきた~!おっと、スターバックス発見。」

なぜか、お茶を一杯。

「ふ~、助かった。」(正直な気持ち)

気がついたら2時間経過。

「だめだ、だめだ、行かなきゃ。」

覚悟を決めて、爆発しそうな心臓を押さえながら・・・
遂に、ミュージアムの入り口へ。


「え~い!行っちゃえ!!」 ミュージアムへ踏み込む。

この前もいたおじさんが、やはりやって来た。そしてこの前と同じように、
「こんにちわ。ミュージアム?それともティー?」

そこで、よしだなおこ道場ヤブリ、「スタート!!」

「たのもう!!」

私は、必死。
「ここで働かしてください!紅茶を勉強したいんです!」
・・・ついでに「お給料もいりません!」(あ、勢いで・・・)

おじさんは困った様子で、「ん~、ブラマーさんに聞いてみないと分から
ないけど、今ちょうどお昼ごはんで外出してるんだ。良かったら、帰って
来るまで待ってる?」

私:「はい!もちろん。」

おじさん:「じゃ、お茶いれてあげるからティールームにどうぞ。」

おじさん良い人だね!!

良かった。第一ハードルクリア!

おいしい紅茶を飲んで、ちょっとホッとしたところに、ブラマーさん登場。

180cmは軽く越えていると思われる、長身のいかにも英国紳士と
いった感じのおじ様が、私の目の前にやさしい笑顔と共に現れた。

ブラマーさんだ!!!!

私はその時、必死でブラマーさんに思いをぶつけた。

私が散々話した後で、ゆっくり、そして穏やかに私を落ち着かせるように
ブラマーさんは言った。

「Yes」

「そんなにも紅茶が好きでいるなんて、とっても嬉しいよ。
あなたの都合の良い時にいつでも働いて下さい。あなたの力になりま
しょう。」

そして最後に、「I’ll make you big.」

なんと、あなたをビックにしてあげましょう。とおっしゃったのです!

この言葉は、ブラマーさんはもう忘れているかもしれないけれど、
私には今でも勇気の湧き出る言葉となりました。

こうして、私はブラマーさんの周りを、土・日以外毎日うろちょろする事に
決まったのでした。

崖っぷちだった私は、ようやく本来の目的に一歩踏み込むことができた。