イギリスの寮ってどんなところ?

遂に寮にたどり着いた!

寮の管理人さんに建物のドアを開けてもらい中に入る。

私も引越しの手伝いをしてくれていた「さくらちゃん」も
さすがに疲れてきた。

管理人さんに部屋の鍵を渡される。

私達は、言葉はなくとも、
お互いに暗黙の了解で心に決めていることがあった。

「部屋に荷物を置いたら、とりあえず「お茶」へ行くぞ!

私の部屋は最上階の5回にあった。

今でも覚えている。512号室だ。

建物の外側は重厚な感じで、歴史を感じるステキな建物だが、
内側はなんとも簡素である。

従業員用のようなエレベーターから降り、味気ない廊下を進み、
味気ない木の扉をいくつか通り抜けて、私の部屋へと
たどり着く。

途中、共同キッチンと、共同トイレ、共同バスがあった。

寮に住むのは生まれて初めてなので、ちょっととまどいながら、
その横を通りすぎた。

なんだか期待が大きかった分。落胆の色を隠せなかった。

それはさくらちゃんも同じだったようだ。

512と書かれたそっけない扉の前に着いた。

さくらちゃんが鍵を開けて、先に部屋に入った。

すると、「直子ちゃん!何かいますっっっ!!!」

「何????!!!!!」

驚いて中に駆け込むと、そこには蜂!!

が、死んでいた・・・・。(^^;

なんとも、感じの悪い寮だ・・・。

私は、蛇よりも何よりも蜂が嫌いだ。

その後、部屋を見渡してみた。

「狭い・・・・。」

「ベットも狭い&ちいさい・・・」

私が日本で広い部屋で過ごしてきたわけではない。

あの部屋はおそらく4,5畳もあったかどうか?と思われる。

正面に窓があって、机が右の壁に向かって置かれていて、
その反対側の左の壁に沿ってベッドが置いてある。

そして、入ってすぐの左横の壁には洗面所があり、
反対側には箪笥のようなワードローブが置いてある。

私は一刻も早くこの部屋から出たい衝動に駆られた。

それはさくらちゃんも同じだったようだ。

二人とも言葉を失い、無言で寮を出た。


「ふー。これからここで住むのか~。」

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ハイゲートの街並み・・・。

これからここでロンドンの生活が始まるのか。気が重くなってきた。
しかし、とりあえずは寮を出て、ハイゲートという街を散策してみる。

寮を出ると、そこは急な下り坂。
街路樹がうっそうと生い茂る緑豊かな閑静な住宅街。

道の両サイドは2階建ての大きなレンガの一軒家が、ゆったりと
した敷地の中に建っていて、均等に並んでいる。

イギリス人は外から部屋が丸見えなのをあまり気にしないのか、
部屋の中が外から丸見えだ。

本がぎっしり詰まったアンティーク書棚のある
趣のある書斎が見える。机の上のランプもステキだ。
きっと、家主は博士に違いない!(勝手な妄想。。。)

おそらく、家の奥には芝生の大きな庭が控えているのだろう。
書斎を通り抜けて、白いテラスが見え、その奥には緑が広がっている。

ブライトンの労働者階級のエリアに住んでいた私にとって、
ここの環境は全く別世界だった。

お高くとまったお金持ちばかりが住んでいたらやだな・・・。


そんな事を考えながら、早、夕方の6時になっていた。

引越しを手伝ってくれたさくらちゃんは、そろそろブライトンに
帰らなくてはならなかった。

イギリスに来て以来、たくさんの時間を一緒に過ごして、
一緒に笑ったり、ホームシックになったりしていたさくらちゃん。

地下鉄のハイゲートの駅まで送りに行った。
何とも言えない不安な気持ちに襲われながら、エスカレーターを
降りていくさくらちゃんを見送った。

「あ~、また一から始まるんだ。。。」

一人の帰り道。取り合えず、明日の朝ご飯を買わなければ・・・。

小さなお店に入り、牛乳と、コーンフレークを手に、レジへ向かう。

黒人の店員さんがいた。

牛乳とコーンフレークを手渡した時、彼は大きな優しい笑顔で
私を見た。

その時の私にとって、天使のような笑顔だった!

何か、救われた気持ちで、あの蜂の死んでいる寮に戻ってきた。

「よし!気持ちを新たに明日から頑張るぞ!!」

「狭い部屋がなんだ!蜂がなんだ!紅茶が近づいたんだ!」

「そうだ!部屋の空気を入れ替えよう!」

上下に開け閉めする窓を、上に勢い良く上げた。

冷たい新鮮な風が部屋に入ってきて、部屋の中の空気が変った。

そこで終われば良かったのだが、窓が自然に閉まってきた・・・。
開けっぱなしにしておきたいのに・・・。くそ~!

なんとか、かんとかで、窓をナナメにして、必死で窓枠に引っ掛け、
開けたままにしようと努力するのだが、これがなかなか・・・。

イギリスの古い家はこれだから・・・。

せっかく上がったテンションが、すっかり下がるのでした・・・。

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寮の不思議な住人達・・・

いよいよ、ロンドンでの生活が本格的に始まった。

引越し翌日に、さっそく語学学校が始まった。

学校は、驚くほどの日本人の数に驚きを隠せない!
ブライトンの倍はいるぞ~!!

クラスの3分の2が日本人。(運悪く、一番日本人の多いクラス・・・)

これで、私の生活は日本人漬けなる危険性が予測されたが、
ここに意外な展開が待っていた。

それは、寮にあった。

なんと、ロンドンにして、日本人の全くいないエリアが存在したのだ!

しかも、メンバーのキャラクターが濃厚なのである・・・。(^^;

お隣さんは、韓国人のおば様。いつもすごい色のピンク色のシャネルの
シャツを着ている・・・。年はおそらく40代・・・。おそらく未婚・・・。
その名も「ヨンジュ」・・・。できすぎだ・・・。
ちなみに、ヨンジュは英語の聞き取りはあまり得意ではないけれど、
とても良い人だ。

お向かいさん&反対隣さんは、スペイン娘3人組。
この3人は、もともと友達で、おそろしく陽気だ!!
夏休みを利用して、1ヶ月の留学に来ていた。

(ヨーロッパの人は夏休み滞在型のケースが多い。)

毎夜10時頃に「ナオコ!パブに行くよ!躍りにいくよ!」と
誘いに来る・・・。一応5回に4回は断る。

そして、毎夜中3時に帰宅しては、彼女達は陽気に「お休み~!」
と、言いながら、勢い良くドアを閉める。
私はいつも起こされることになる・・・。

極めつけは、ロシア人のオルガ。
年は19歳だったと思う。英語は堪能で良くしゃべる。
いつも理解不能なロシアンジョークの話を聞かされるが、
何回、聞いても、何がどうおかしいのか理解できない。
当のオルガは笑い転げながら、これがロシアンジョークなの!と
私の部屋に来ては披露してくれるのだ。

一つを披露してみよう。
どういう意味か知っている人がいたら、是非教えて欲しい。

お母さんがキッチンにいて、子供とお父さんがリビングにいる
設定だ。

子供 「お母さんはどこ?」(シリアスな顔で)
お父さん 「キッチンだよ。」

子供 「お母さんはどこ?」(同じシリアスな顔で)
お父さん「だから、キッチンだってば」

子供 「お母さんはどこ?」(全く同じシリアスな顔で)
お父さん 「だから、お前の為にキッチンで料理をしてるだろ!」

子供 「お母さんはどこ~!!」(怖い顔で叫ぶのです・・・。)

終わり・・・。

これだけで理解しろと言うほうが難しい・・・。

しかも、子供役をする時のオルガの顔が怖いのです・・・。
口をほんの少しだけ動かして、目はすわっているのだから・・・。


この5人+私の6人が同じキッチン・バスルームを共有していたのです。

お陰で、英語漬けの楽しい寮生活の始まりとなったのです。


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まずは紅茶ミュージアム視察

ミュージアムで勉強したいとはいえ、どんなところなんだ??

そこで、お客さんとして一度行ってみることに。

学校の友達と一緒にロンドンブリッジ駅へ。
ガイドブックの地図を片手に、きょろきょろ。

ロンドン塔や、タワーブリッジが見えるテムズ川沿いのおしゃれな道を
抜けると、目的のミュージアムが見えてくる。

遂に、念願の紅茶ミュージアム到着。意外とこじんまり。

中に入ってみる。誰も受付にいない。
でも、すぐにニコニコしたおじさんがやって来る。学生一人3ポンド。

「ごゆっくりどうぞ!」といって、おじさんは忙しそうにまたどこかに行って
しまった。
なにやら、アットホームなミュージアムのよう。

ミュージアムは想像以上に面白かった。お茶の歴史が中国から始まり
色々な展示物と一緒に楽しめる。内容はなかなか詳しい。
日本のコーナーもあった。「○○園」とかかれたハッピまである。

館長ブラマー氏のコレクションであるティーポットもいったいいくつあるのか。
すごい数だ。

世界一大きいティーポットもあり、誰がこのティーポットで紅茶を飲むの?
しかも、取っ手が折れてる。そしてテープで修正してるだけ・・・。
おもしろいぞ、このミュージアム!

そして、ひときわ目を引いたのが、昔のイギリスの社会を風刺した
風刺画だ。紅茶を飲みながら、人々は色々な噂話や面白話しを
楽しんでいたので、よく紅茶を飲むシーンと一緒に描かれている。
紅茶がイギリスの生活に密着していることがよく分かる。

そして、最後はティールームでお茶が楽しめるようになっている。

私は確かアッサムティーを頼んだと思う。

ティーポットには、たっぷり3杯の紅茶が飲めるほど入っていた。
しかも、よく香りと味が出ている。

イギリスに来て以来、初めての紅茶の香りだ。

通常イギリスでは、ティーバックでも味は意外によく出ているが、
香りが出ているのは珍しい。と、いうか、初めてだ。

そして、ここの紅茶は有無を言わさず、ミルクティー。
実は、私はストレート派。 (当時はそうでした)
しかし、ここのミルクティーは日本で飲んでいたものと違う。
ミルクが違うようだ。スッキリとした味で、嫌な後味にならない。

私は、一気にこの紅茶が大好きになった。

やっぱり、ここで紅茶を勉強するんだ!!

ここ以外にはない!
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道場ヤブリ 「たのもう!!」

ひとまず家に帰り、一晩かけて、ブラマーさんに話す内容を考えた。
失敗するわけにはいかない。


よし!ミュージアムに行って、「働かしてください!」と、言うんだ!

イギリスにせっかく来たのに、紅茶の学校が無いからって帰れる訳がない!

「なおこガンバレ!!」 自分で自分を励ます。


いざ出陣!(心は武士・・・)


ロンドンブリッジ駅からミュージアムまでの15分の道のり。
ブラマーさんに伝えることを、ぶつぶつと独り言をいいながら、一人歩く。
「あ~、ミュージアムが近づいてきた~!おっと、スターバックス発見。」

なぜか、お茶を一杯。

「ふ~、助かった。」(正直な気持ち)

気がついたら2時間経過。

「だめだ、だめだ、行かなきゃ。」

覚悟を決めて、爆発しそうな心臓を押さえながら・・・
遂に、ミュージアムの入り口へ。


「え~い!行っちゃえ!!」 ミュージアムへ踏み込む。

この前もいたおじさんが、やはりやって来た。そしてこの前と同じように、
「こんにちわ。ミュージアム?それともティー?」

そこで、よしだなおこ道場ヤブリ、「スタート!!」

「たのもう!!」

私は、必死。
「ここで働かしてください!紅茶を勉強したいんです!」
・・・ついでに「お給料もいりません!」(あ、勢いで・・・)

おじさんは困った様子で、「ん~、ブラマーさんに聞いてみないと分から
ないけど、今ちょうどお昼ごはんで外出してるんだ。良かったら、帰って
来るまで待ってる?」

私:「はい!もちろん。」

おじさん:「じゃ、お茶いれてあげるからティールームにどうぞ。」

おじさん良い人だね!!

良かった。第一ハードルクリア!

おいしい紅茶を飲んで、ちょっとホッとしたところに、ブラマーさん登場。

180cmは軽く越えていると思われる、長身のいかにも英国紳士と
いった感じのおじ様が、私の目の前にやさしい笑顔と共に現れた。

ブラマーさんだ!!!!

私はその時、必死でブラマーさんに思いをぶつけた。

私が散々話した後で、ゆっくり、そして穏やかに私を落ち着かせるように
ブラマーさんは言った。

「Yes」

「そんなにも紅茶が好きでいるなんて、とっても嬉しいよ。
あなたの都合の良い時にいつでも働いて下さい。あなたの力になりま
しょう。」

そして最後に、「I’ll make you big.」

なんと、あなたをビックにしてあげましょう。とおっしゃったのです!

この言葉は、ブラマーさんはもう忘れているかもしれないけれど、
私には今でも勇気の湧き出る言葉となりました。

こうして、私はブラマーさんの周りを、土・日以外毎日うろちょろする事に
決まったのでした。

崖っぷちだった私は、ようやく本来の目的に一歩踏み込むことができた。


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